キミさんのマドレーヌ

9月末。日本好きパリジャンの間では知られた場所、サンジェルマンの寿月堂でKimiさんの「マドレーヌ」のお披露目試食会があると聞き、早速伺った。

Kimiさんは、カナダで生まれ、幼少期をロンドンで過ごした。その後日本に帰国後ファイナンス分野でキャリアを積み、ロンドン駐在を経て拠点をフランスに移動。フランス到着直後から自身が好きでよく作っていたマドレーヌーフランス菓子を象徴する焼き菓子ーに日本のエッセンスを入れて新しいものができないかと考え始め、お菓子作り・販売に転身を決意したそうだ。

フランスのマドレーヌと言えばたっぷりバターのイメージが強いが、Kimiさんのマドレーヌには何とバター・ミルク・白糖が使われていないという。これには驚いた。最近流行りの健康志向、アレルギー対策というやつですか？という私の質問には大笑いして「よく聞かれます。でも、実はただ単に抹茶や柚子のフレーバーの風味を生かすこと、単純にふわふわ感をより出すことを追求したらこうなりました。」との返答。バターの代わりには米油、ゴマのマドレーヌにはごま油が、白糖の代わりにははちみつを使用している。えー…バターなし、それって美味しいのかなぁ…と、並んだマドレーヌを横目で眺めながらお茶をすするバター信者の私。通常より少し小さめで、品よく並んだマドレーヌたちは色も質素でかわいらしいのだけれど…。

黒ゴマにゴマ油のダブルゴマだが、味も香りも全くきつくない。なるほど！米粉50％と小麦粉50％の配合のマドレーヌは確かにふわふわ感が心地いい。それでいてしっとりもしている。ただ、フランスのマドレーヌー表面はカリッと、中はしっとりーを想像して食べると、最初はあれっ？と思うかもしれない。特に最近、日本のお菓子やパンはやたらふわふわ感が重視されていると感じる私。

続いて柚子、抹茶、味噌。

味噌フレーバーの味がしっかり出ているのは想定内だったが、驚いたのは抹茶の風味が見た目よりずっとしっかり感じられたことだ。最近パリでは、えっ、なぜこんな緑に！と思うほどやたら色だけ主張していて、抹茶の苦さだけが感じられる自称抹茶お菓子がたくさん出回っているのだが、Kimiさんのマドレーヌは違った。色はあまり目立たないのだが、しっかり抹茶の香りと風味が楽しめる。バターがいっぱい入っていたら恐らくこれは感じられないのかもしれない。もちろん、寿月堂の質のいい抹茶を使用しているのも理由の一つに違いないけれど。

抹茶以外の材料にもKimiさんのこだわりが感じられる。ほぼ全ての材料はビオ(オーガニック)商品で、ローカルな食材を取り寄せている。例えば、米粉と小麦粉はパリ近郊ヴェルサイユのMoulin de Versailles、味噌はピレネーのYoromiso、抹茶は寿月堂、柚子やゴマは高級日本食材店Nishikidoriといった風である。

通常はゴマ・抹茶・味噌・柚子のフレーバーを販売するが、季節のフレーバーとして蕎麦・栗・桜なども販売予定だそうだ。個人的にはクリスマスの生姜チョコレートがちょっと気になっている。値段は5個入り9－11ユーロ、10個入り16－19ユーロでフランス国内の配達は3ユーロ。現在、店舗販売は寿月堂のみで、ネット販売中心だが、今後レストランや店舗の展開なども視野にあるそうなので、近いうちにこのマドレーヌたちに別の場所でも会えるかもしれない。

La Madeleine de Kimi

www.lamadeleinedekimi.fr

Moulins de Versailles le meunier local du bassin parisien
Yoromiso – Fabrication artisanale de koji et de miso japonais en France
Maison de thés japonais Jugetsudo
Nishikidori Market