銀座鮨青木のカニづくし

私が銀座の「鮨青木」に初めて行ったのは2006年8月ですから、もう17年の付き合いになります。名人と言われたお父様の青木義(よし)さんの跡を継いだ二代目青木利勝(としかつ)さんによって、鮨青木は銀座を代表する鮨屋となりました。ここでは厳選された旬の魚介で作る伝統的な江戸前の鮨に加えて、二代目自身が外国旅行して現地で食べた料理や、国内外の一流店で食事をしてヒントを得た食材・調理法を取り入れた創作料理を食することもできます。店主の端正な立ち振る舞いと、丁寧な職人技がカウンター越しに見られるのも醍醐味です。

青木さんとは個人的にも親しくなり、一緒に色々旅行もしました。青森県の酸ヶ湯温泉に行き、青森港に近い「寿司一」という青木さんの知り合いのお店に連れて行ってもらったこともあります。銀座の「久兵衛」で修行したという「寿司一」のご主人横沢さんは、フグの煮こごりからスタートして締めの大間のマグロ握りまで21種類の鮨やつまみを出してくれました。そして翌朝わざわざ車で私達を青森市場まで案内して「銀座の鮨青木の大将じゃけんに」と、市場の仲間に紹介してくれると、仲間達がそれぞれの店の売り物の魚をどぶろくと一緒に持ち寄り、市場の隅で宴会が始まってしまいました。私達はもう少しで帰りの列車に乗り遅れそうになる位、陽気な青森の仲卸人達に御馳走になりました。懐かしい思い出です。

昨年12月に「蟹尽くしはいかがですか？」と誘われて、鳥取のズワイガニの味覚を楽しみました。ズワイガニは雄・雌の違いによって、また獲れた地方によって様々な呼ばれ方をしますが、代表的な呼び名は以下の通りです。

雄：ヨシガニ（庄内）、越前蟹（北陸）、タイザガニ（丹後）、松葉蟹（山陰）
雌：クロコガニ（北海道）、セイコガニ（丹後）、香箱蟹（山陰）

はじめに生きているズワイガニが豪快に目の前にドンと出され、「お一人一匹ずつで、刺身、茹で、蟹しゃぶなど、色々な食べ方を楽しんで下さい」とのこと。まずは刺身をポン酢で食べます。弟子の板前さんが炭焼き蟹の準備をする間、青木さんはお造り（マグロ・ヒラメ)と雲丹・キャビア・ジュンサイの前菜で変化を入れます。続いて蟹足の焼いたもの、それから雌の香箱蟹が身と魚卵を一緒に盛って出されたので、お酒がグイグイ進んでしまいました。

そして蟹の出汁と蟹味噌の足の先を「しゃぶしゃぶ」して、蟹肉の表面がうっすら白くなったものを、「アチッ！」と言いながら口に放り込みます。しゃぶしゃぶと一緒に、ほぐした蟹がたっぷり入った蟹ご飯も食べて、ズワイガニ一匹が胃袋に収まりました。

お好み鮨をいただき、最後のデザートは栗のモンブラン。剥いて茹でた栗を、青木さん手製の道具を使って練り切りにして出してくれました。最後まで堪能し、ごちそうさまでした、と大満足の笑顔で店を後にします。長年通っていますが、次回はどんな驚きや発見があるのだろうといつもワクワクする店、最高の食材を最高の状態で食べられる店、それが鮨青木です。

銀座 鮨青木(Ginza SUSHI AOKI)：銀座／江戸前鮨・すし